
【2025年版】外国人雇用の基本から実務まで行政書士が徹底解説

執筆者:くまのみ法務事務所 代表行政書士 松永 浩行
日本社会では少子高齢化が進み、労働力人口の減少が深刻な課題となっています。特に介護、建設、製造、サービス業などの現場では慢性的な人手不足が続いており、多くの企業が外国人労働者の採用を検討しています。しかし、初めて外国人を雇用する企業にとっては、在留資格や手続き、文化的な違いなど、不安や疑問が多いのも事実です。
本記事では、行政書士の立場から、外国人雇用の背景、採用メリット・デメリット、雇用に必要な手続き、実務上の注意点までを、分かりやすく解説します。
◆目次
- 外国人雇用が進む背景と今後の展望
- 外国人を雇うことで得られるメリット
- 外国人雇用に潜むリスクとその回避方法
- 採用までのステップとスムーズな進め方
- 外国人雇用に必要な在留資格の種類と確認ポイント
- 雇用開始後に必要な手続きと届出の詳細
- 外国人が定着しやすい職場づくりの工夫
- まとめ:外国人雇用は企業の未来を支える選択肢
【1. 外国人雇用が進む背景と今後の展望】
少子化により、2030年には日本の労働人口が大幅に減少すると予測されています。これに伴い、政府は「外国人材の受入れ拡大」を国策として推進しており、在留資格「特定技能」や「高度専門職」などの制度が整備されました。
厚生労働省の調査によれば、2023年末時点で外国人労働者数は過去最高の2,048,675人を記録し、外国人雇用に対応する企業も年々増加しています。特に技能実習や特定技能の枠での採用が伸びており、今後さらに拡大が見込まれています。
【2. 外国人を雇うことで得られるメリット】
▼1. 人材確保の選択肢が増える 外国人を採用することで、採用活動の幅が広がり、慢性的な人手不足に対応できます。特に地方の中小企業では効果的です。
▼2. 多言語・多文化への対応が可能に 外国人スタッフの採用により、多言語対応や異文化理解が進み、インバウンド需要への対応や海外展開への橋渡しが可能になります。
▼3. 助成金や雇用支援制度の活用 外国人雇用に対して、国や自治体が助成金を提供している場合もあります。賃金補助や教育支援などの活用で、コスト面のメリットも。
▼4. 組織の多様性が向上し、新たな価値が生まれる 多様な文化背景を持つ人材を採用することで、社内に新しい視点が加わり、組織活性化やイノベーションの促進にもつながります。
【3. 外国人雇用に潜むリスクとその回避方法】
▼1. 文化・宗教的背景の違い 宗教による食事制限や祝祭日、価値観の違いから摩擦が生じることも。事前にヒアリングを行い、社内共有を行いましょう。
▼2. 言語の壁 日本語能力にばらつきがあるため、マニュアルの多言語化や図解資料の用意、通訳アプリの導入などの工夫が必要です。
▼3. 在留資格に関する法令違反リスク 就労資格を持たない外国人を雇用してしまうと、企業側が不法就労助長罪に問われる可能性も。在留カードや資格の確認は必須です。
【4. 採用までのステップとスムーズな進め方】
外国人雇用の採用方法には以下の3つがあります:
①求人サイト・自社HPによる募集 ②社内外国人スタッフからの紹介 ③外国人専門の人材紹介会社に依頼
選考時には在留資格の有無や日本語能力を確認し、雇用後のミスマッチを防ぐための面接やトライアル制度も効果的です。
【5. 外国人雇用に必要な在留資格の種類と確認ポイント】
外国人が日本で働くには、在留資格と呼ばれる法的ステータスが必要です。ここでは、近年特に採用が進んでいる「技能実習」と「特定技能」についても詳しく見ていきます。
▼無制限で就労可能な在留資格 ・永住者 ・定住者 ・日本人の配偶者等 ・永住者の配偶者等
▼職種に制限のある在留資格(一部抜粋) ・技術・人文知識・国際業務 ・介護 ・技能(料理人、職人など) ・特定技能(14分野)
特定技能は、2019年に創設された制度で、特に人手不足が深刻な14の業種(介護、建設、宿泊、外食業など)で外国人が即戦力として就労できる制度です。特定技能には「1号」と「2号」があり、1号は一定の技能試験と日本語能力が必要で、通算5年までの在留が可能です。2号はより高度な技能を有し、家族の帯同も可能で、更新により長期滞在が可能です。企業側には、生活支援や日本語教育などの義務が課せられるため、登録支援機関との連携が重要になります。 ・技能実習(研修目的)
技能実習制度は、開発途上国への技能移転を目的として1993年に導入された制度です。建設業、農業、縫製業、食品加工業などで実施されており、1号から3号まで段階的に技能を学ぶ構成となっています。最大5年の滞在が可能で、受入れ企業は監理団体を通じて技能実習生を迎え入れることになります。ただし、労働力確保が目的ではなく、教育・訓練であることを理解し、適切な指導体制と労働環境の整備が求められます。
在留カードの確認では、「就労可」「資格外活動許可の有無」をチェックすることが重要です。
【6. 雇用開始後に必要な手続きと届出の詳細】
雇用が決まった後は、以下の手続きを迅速かつ確実に進める必要があります:
・雇用契約書の作成(日本語・外国語両方が望ましい) ・在留資格の確認および更新 ・外国人雇用状況の届出(ハローワーク) ・社会保険・雇用保険への加入 ・住民登録、銀行口座の開設サポート ・就労資格証明書の交付申請
【7. 外国人が定着しやすい職場づくりの工夫】
▼職場内の理解促進 外国人採用の背景や意図を現場の社員にしっかりと説明し、協力体制を築きます。
▼生活支援の提供 ・住宅確保(敷金・礼金支援など) ・印鑑、携帯電話、インターネット契約の補助 ・交通機関や買い物の案内
▼社内コミュニケーション支援 ・母国語での掲示や社内資料の準備 ・言語研修の実施や日本文化の研修 ・定期的な面談や相談窓口の設置
【8. まとめ:外国人雇用は企業の未来を支える選択肢】
外国人材の受け入れは、企業にとって人手不足対策のみならず、新たなビジネスチャンスの創出にもつながる重要な取り組みです。
ただし、在留資格の確認や書類作成、社内整備といった法的・実務的な準備が必要不可欠です。行政書士として、外国人雇用に必要なすべてのサポートを行っております。
「外国人を雇いたいが何から始めればいいかわからない」「法令遵守が心配」という企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。