
BCP未策定減算は遡って適用されます|グループホーム3%・就労継続支援B型1%

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。
障害福祉のBCP未策定減算について、事業者様から「BCPですか。たしか、作ってあったはずです」とうかがうことがあります。ところが計画書を見せていただくと、出てくるのは「非常災害に関する具体的計画」だったり、感染症対策の指針だったり。どちらも大切な書類です。ただ、業務継続計画(BCP)とは別のものです。
そして、その「別のもので足りていた」期間は、令和7年3月31日で終わっています。
業務継続計画未策定減算の対象になるのは、どの事業者か
就労継続支援B型やグループホーム(共同生活援助)を運営されている事業者様の話です。
令和6年4月1日から、障害福祉サービス事業者には業務継続計画(BCP)の策定が義務づけられ、未策定の場合は基本報酬が減算されることになりました。これが業務継続計画未策定減算です。感染症と非常災害、どちらか一方でも欠けていれば減算の対象になります。
ただし、当初は経過措置がありました。令和7年3月31日までの間は、「感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備」と「非常災害に関する具体的計画」の策定を行っている場合には、減算を適用しない、というものです。
この経過措置が終わって、すでに1年以上が経ちました。
減算率は共同生活援助が3%、就労継続支援は1%
BCP未策定減算の減算率は、サービス種別によって違います。ここは見落とされやすいところです。
- 所定単位数の3%を減算:療養介護、施設入所支援(障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助(グループホーム)、宿泊型自立訓練、障害児入所施設
- 所定単位数の1%を減算:生活介護、自立訓練(宿泊型を除く)、就労移行支援、就労継続支援(B型を含む)、就労定着支援、短期入所、居宅介護、重度訪問介護 など
グループホームは3%です。就労継続支援B型と同じ感覚でいると、影響を三倍で見誤ります。
BCP未策定減算は、いつまで遡って適用されるのか
いちばん怖いのが、ここです。減算は、指摘された月から始まるのではありません。
「基準を満たさない事実が生じた月」から「基準を満たさない状況が解消されるに至った月」まで。しかも、事実が生じた時点まで遡及して適用されます。
つまり、運営指導で「BCPがありませんね」と言われたとき、その日から1%が始まるのではなく、無かった時点まで戻る、ということです。気づいていない期間が長いほど、静かに積み上がっていきます。
「作ってある」と「策定されている」の間にあるもの
私は消防の予防課で約30年、5,000件を超える立入検査に携わってきました。計画書を見る側、指摘する側に長くいた立場から申し上げます。
確認する側が見ているのは、書式の空欄が埋まっているかどうかではありません。その計画が、その事業所のものになっているかどうかです。
ひな形をダウンロードして、事業所名と代表者名だけを差し替えた業務継続計画は、失礼ながら、見ればわかります。
- 緊急連絡網に載っている職員が、もう退職している
- 参集基準は書いてあるが、その職員は片道1時間半のところに住んでいる
- 感染症のゾーニングの図が、実際の間取りと合っていない
- 「代替職員を確保する」と書いてあるが、誰が、どこから来るのかが無い
書類としては存在しています。ただ、災害の日にも感染症の朝にも、この紙は動きません。そして見る側は、そこを見ます。
感染症のBCPは、特にここが出ます。「濃厚接触者が出たらゾーニングする」と一行書くのは簡単ですが、実際には、誰がその線を引き、誰が防護具を着け、手が足りない夜勤帯をどう回すのか、というところまで降りていないと、計画は動きません。当事務所には看護師と保健師が在籍しており、この部分は資料の要約ではなく、現場が回るかどうかで見ています。
減算額を数字にすると、いくらになるか
仮に、月の総報酬額が300万円の就労継続支援B型事業所だとします。1%は月3万円です。小さく見えるかもしれません。
ただし、これは毎月です。解消するまで続きます。経過措置が終わった令和7年4月から気づかずに来ていたとすれば、1年で36万円。同じ規模のグループホームで3%なら、年間100万円を超える計算になります。
(あくまで仮の試算です。実際の額は報酬区分・定員・加算の構成によって変わります)
そして、これは「引かれる」お金であるだけでなく、「返す」お金になり得ます。遡及して適用される以上、運営指導で発覚したときには、過去分の返還という形で、まとまった金額が一度に出ていくことになります。毎月3万円は資金繰りに乗せられても、ある日の40万円は乗せにくい。経営の痛みとしては、こちらの方が重いはずです。
今日、5分でできる確認
まず、お手元の計画書を開いて、3つだけ確認してください。
- その計画の名前は「業務継続計画」になっているか。 「非常災害に関する具体的計画」や「感染症対策の指針」しか無い場合、BCPは未策定と判断される可能性があります。
- 感染症と自然災害の、両方があるか。 片方だけ、というケースは少なくありません。どちらか一方でも欠けていれば減算の対象です。
- 中に書いてある職員の名前と連絡先は、今の職員か。
ひとつでも引っかかったら、そこが出発点です。減算は遡ります。裏を返せば、早く解消するほど、止まるのも早いということです。
BCPのご相談を承っています
業務継続計画は、期限までに形にすることと、実際に動くものにすることを、両方やらなければならない書類です。片方だけでは、減算は止まっても現場は守れませんし、現場を守っても書類が無ければ報酬が削られます。
当事務所では、無料相談を承っています。「これがBCPと言えるのかどうか分からない」という状態のまま、お手元の計画書をお持ちください。行政の側で計画書を見てきた目と、看護・保健師の目の両方で、足りているところと足りていないところをお伝えします。
顧問契約はもちろん、BCPの策定や指定申請などのスポットでのご依頼も承っています。広島・山口を拠点に、オンラインで全国対応しています。
※本記事は「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(厚生労働省)にもとづき、2026年7月時点の情報で作成しています。減算の適用や取扱いの細部は、所轄自治体の運用によって異なる場合があります。個別の判断については、所轄自治体または当事務所へご確認ください。
