福祉施設の物件は消防で止まる|就労B型・GHは「厳しい側」の用途です

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。

「いい物件が見つかったので、ここでグループホームを始めたい」——そう決めてから、消防設備の話で止まってしまう。これは、福祉事業を始める方が、いちばんつまずきやすいところの一つです。今日は、就労継続支援B型やグループホーム(共同生活援助)が、消防法の上ではどれくらい”厳しい側”の用途なのか、そして物件を決める前に消防で何を確かめるべきかを、取り締まる側を30年やってきた行政書士の立場からお話しします。

目次

福祉施設は、消防法で「厳しい側」に分類されています

消防法の規制の強さは、建物の用途で決まります。その用途を分類したのが、消防法施行令の別表第一という表です。ここで、福祉施設は(6)項に位置づけられます。就労移行支援・就労継続支援・共同生活援助(グループホーム)を行う施設は(6)項ハに、重い障害のある方が主として入所する施設などは(6)項ロに、それぞれ明記されています。

そして、この(6)項は「特定防火対象物」です。特定防火対象物とは、不特定多数が出入りする、あるいは自力での避難が難しい人が利用する用途のこと。飲食店やホテル、病院と並んで、福祉施設はこの「消防法が厳しい側」に入っています。

なぜ厳しいのか。理由は、火災のときに逃げ遅れのリスクが高いからです。夜間、少人数の職員で、自力避難が難しい利用者を守らなければならない。だからこそ、消防用設備の基準も、防火管理の求められ方も、一般の事務所や倉庫とはまるで違います。ここを知らずに物件を選ぶと、あとで大きな手戻りになります。

物件を「借りてから」消防で止まる、という失敗

いちばん多い失敗が、これです。先に物件を契約してしまい、あとから消防設備が足りないと分かる。

福祉施設として使うには、その建物が、用途と規模に応じた消防用設備を備えている必要があります。代表的なのは、自動火災報知設備(自火報)、消防機関へ通報する火災報知設備、誘導灯、消火器など。そして、規模や利用者の区分によっては、スプリンクラー設備が必要になることもあります。とくに、自力避難が難しい方が中心の施設((6)項ロ)は、基準が厳しくなる傾向があります。

これらの具体的な基準は、用途区分と建物の規模で細かく変わり、所轄の消防によって運用の判断も分かれます。 だから、「この面積なら大丈夫」とネットの情報で決めつけるのは危険です。契約してから「スプリンクラーが要る」と分かれば、数百万円単位の改修になることも、そもそも設置できずに使えないことすらあります。

消防は、指定申請の「前」の関門です

もう一つ、順番の話をしておきます。福祉施設を開くには、都道府県・市町村への指定申請が必要ですが、その前提として、建物が建築基準法・消防法に適合していることが求められます。

つまり、消防のクリアは、指定申請より手前にある関門です。ここでつまずくと、その先の指定申請にも、開設予定日にも、すべて影響します。逆に言えば、物件を決める前に消防を確認しておけば、この関門は怖くありません。 順番を間違えないことが、何より大事です。

設備だけではありません|避難経路と区画も見られます

消防が見るのは、消火器やスプリンクラーといった「設備」だけではありません。本丸は、火が出たときに、利用者が逃げられるかどうかです。避難経路が家具や物でふさがれていないか、出口までの幅は取れているか、二方向に逃げられるか。内装に燃えやすい材料が使われていないか、火や煙を食い止める区画ができているか。福祉施設では、夜間に少人数の職員で避難を助けることを前提に、ここを見られます。査察で私が現場に立ったとき、最初に見るのも、消火器の位置ではなく、この「逃げ道」でした。物件の間取りによっては、ここで手直しが必要になることもあります。

住宅やアパートからの転用は、特に注意してください

グループホームでは、戸建てやアパートの一室を借りて使うことがよくあります。ここに、大きな落とし穴があります。住宅として建てられた建物を福祉施設として使うと、用途が変わり、消防の基準も変わるからです。

「今まで人が住んでいたのだから大丈夫だろう」とは、なりません。用途が別表第一の(6)項に変われば、自動火災報知設備の設置や、場合によっては消防機関へ通報する設備などが、新たに必要になることがあります。建築の面でも「用途変更」の手続きが絡むことがあり、消防と建築の両面で確認が要ります。中古物件・住宅からの転用ほど、契約の前の確認が効く、と覚えておいてください。

(6)項の中でも、入居か通所かで変わります

同じ福祉施設でも、消防の見方は一律ではありません。自力での避難が難しい方が中心か、夜間に人が泊まるかどうかで、求められる備えが変わってきます。

たとえば、日中の活動が中心の就労継続支援と、夜間も利用者が生活するグループホームとでは、火災時に想定すべき場面が違います。夜間に人が泊まる施設ほど、避難の体制も設備も、慎重に見られる傾向があります。自社が始めようとしているのが、このうちどの形なのか——ここを押さえておくと、消防との話がぐっと具体的になります。

これは「安全の話」であり、「お金と時間の話」でもあります

消防設備を、「決まりだから付けるもの」と捉えると、後回しになりがちです。でも、経営の目で見れば、これはお金と時間、そして事業が始められるかどうかの問題です。

物件を決めてから消防で引っかかれば、想定外の改修費がかかり、開設が何か月も遅れます。最悪の場合、その物件では開けません。一方、契約の前に消防を確認しておけば、これらはほぼ防げます。 事前の確認は、いちばん安い保険です。そして何より、きちんと備えた施設は、いざというとき利用者の命を守れます。安全と経営は、ここで一致します。

「所轄に聞いてください」で終わらせません

消防設備の基準は、用途区分と規模で決まり、細かな運用は自治体・所轄消防で分かれます。だからこそ、当事務所では、ご依頼をお受けした際に、所轄の消防へ直接確認を取り、その物件で何が必要かを整理します。 「所轄に聞いてください」で終わらせず、その確認ごと引き受ける——これが、消防の予防査察を30年やってきた事務所のやり方です。取り締まる側が現場で何を見るかを知っているので、図面や現地の段階で、つまずきそうな点に先回りできます。

物件を決める前に、一度ご相談ください

「この物件で就労B型/グループホームを開けるか」「消防で何が必要になりそうか」——契約する前の、この段階でのご相談がいちばん効きます。

相談をスムーズにするために、物件を見に行く前に、次の3つだけ控えておいてください。これがあれば、消防の見立てが一気に具体的になります。

  • 建物の延べ面積と、おおよその階数
  • 何人の利用者を、通所か・入居(宿泊あり)か
  • その建物が元々どんな用途だったか(住宅・店舗・事務所など)
  • これから開設・移転・改修される方の就労継続支援B型・グループホームのご相談はこちら
  • 物件の下見・契約前の消防確認だけのスポットご相談も、指定申請まで通した継続のご依頼も、どちらも承っています
  • 広島・岩国を拠点に、オンラインで全国対応しています。まずはお問い合わせから、物件の所在(市区町村)とおおよその規模を添えてご連絡ください

物件を決めてからでは、選べる手が減ります。決める前に、消防を味方につけましょう。 そこから、一緒に進めます。

※本記事は一般的な情報提供です。消防用設備の要否・種別・設置基準は、用途区分・建物の規模・所轄消防の運用により異なります。個別の対応は所轄への確認のうえ進めます。

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