
グループホーム夜間の地震対応|手薄な時間帯に誰が動くか

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。今日は「グループホーム 夜間 災害」という検索でたどり着かれた方に向けて、共同生活援助(グループホーム)の夜間の防災体制について書きます。
深夜2時、グループホームのリビングには世話人が1人。ほかの職員は全員、自宅で休んでいます。利用者の皆さんは、それぞれの居室で就寝中です。そこへ震度6弱クラスの地震が来たら、何が起きるでしょうか。玄関の鍵はすぐ開けられるか、誰が誰を先に起こすか、応援の職員はどれくらいで駆けつけられるか。こうした問いに、今のBCP(業務継続計画)は具体的に答えられているでしょうか。
グループホームの夜間体制と業務継続計画(BCP)|誰の話か
これは「誰の話か」から始めます。共同生活援助(グループホーム)を運営していて、夜間は世話人・支援員が1人、多くても2人という体制の事業者に向けた話です。日中は職員が揃っていても、夜間・休日になると急に手薄になる。これはこの業態の構造そのものであり、恥じることではありません。問題は、その「手薄な時間帯」を前提にした計画になっているかどうかです。
業務継続計画は、感染症だけでなく自然災害についても策定が求められています。この点はすでにご存じの事業者が多いと思います。ただ、公開されているひな形をそのまま埋めただけの計画書は、実際に夜間に地震が起きたときにはほとんど機能しません。これは私が消防の予防査察を約30年、5,000件以上担当してきた経験から、はっきり申し上げられます。
夜間の地震対応で、行政の側が計画のどこを見るか
行政の側から見た視点を、もう少し具体的にお伝えします。避難計画やBCPを審査する立場でまず見るのは、「この計画は職員が全員揃っている昼間を想定して書かれていないか」という点です。多くのひな形BCPは、管理者やサービス管理責任者を含めた全員が出勤している前提で、参集基準や役割分担が組まれています。ところが実際に災害が起きるのは、昼とは限りません。夜間、職員が1人しかいない状態で、利用者を安全な場所まで誘導し、応援職員を呼び、ご家族や関係機関に連絡する。この一連の動きを、その1人がどこまで実行できるのか。参集基準に書かれている職員が、実際にどれくらいの時間で駆けつけられる距離に住んでいるのか。ここまで具体的に詰めてある計画は、正直なところ多くありません。
もう一つ、鍵の管理も見落とされがちな点です。夜間は施錠されている居室や玄関を、誰がどの順番で開けるのか。停電したときに、電子錠や自動火災報知設備の作動はどうなるのか。こうした設備面の想定は、書類の文言をなぞるだけでは出てきません。実際に夜、その建物を歩いてみないと分からないことが多くあります。
職員が1人しかいない前提で計画を立てるなら、「全員を同時に、同じように助ける」という発想そのものを見直す必要があります。まず動ける利用者に声をかけて安全な場所への移動を促し、その間に支援が必要な利用者のところへ向かう。どの順番で、何を優先するか。1人でできることには限りがあるという前提に立って、優先順位をあらかじめ決めておくことが、結局は全員の安全につながります。これは消防の現場でも同じで、限られた人数・時間の中では「何を先にやるか」を決めてあるかどうかが、結果を大きく左右します。
なお、消防法にもとづく避難訓練と、BCP(業務継続計画)上で求められる訓練は、そもそも目的も対象も別のものです。「消防訓練をやっているから、BCPの訓練も済んでいる」という理解は誤りです。施設の規模や状況によって、それぞれに求められる内容は変わりますので、この2つの関係は事業所ごとに整理が必要な論点として、別の記事で詳しく扱います。ここでは、夜間を想定した訓練を「した」という記録そのものが、運営指導で計画の実効性を裏づける材料になる、という点だけ押さえておいてください。
利用者の特性を踏まえた夜間避難|医療・救急の視点から
私は救急救命士・准看護師でもあります。人が実際に倒れる、動けなくなる現場を数多く見てきました。利用者の中には、避難経路を自力で歩くことが難しい方、指示がすぐには伝わりにくい方、混乱するとかえって動けなくなってしまう方もいます。「利用者を誘導する」と一行だけ書かれた計画は、現場では機能しません。誰が、どの利用者を、どの順番で、どこまで支援するのか。夜間に1人しかいない職員が、それを利用者全員分こなせるのかを、具体的に想定しておく必要があります。なお、個々の利用者の医療的なケアについて医学的な個別判断が必要な場面は、主治医や医療機関との連携が前提であり、当事務所が代わって判断するものではありません。
当事務所には、看護師(歴30年)と保健師も(大学院公衆衛生学専攻)在籍しており、感染症や体調急変を想定した場面についても、体制として一緒に計画を組み立てることができます。
夜間の防災体制にかけるコストと、事業の損得
ここからは事業の損得の話に移ります。夜間の体制が具体的に計画されていないまま事故が起きた場合、失うものは利用者の安全だけにとどまりません。運営指導で「計画書はあるが実際には機能しない」と判断されれば、その後の是正対応に時間と人手を取られます。行政への説明、ご家族への説明、そして採用が難しくなるという評判の問題も出てきます。福祉の現場はどこも人手が足りていません。「あの事業所は夜間の体制がしっかりしている」という評判は、実は採用にも直結します。
一方で、夜間の参集にかかる時間を洗い出し、緊急連絡網を実際に機能する形に整え、年に数回でも夜間を想定した訓練を記録に残しておく。このコストは、事故が起きてから支払うコストに比べれば、はるかに小さいものです。MBA(大学院経営管理研究科)で学んだファイナンスの視点で言えば、これは保険に近い投資判断です。起きるかどうか分からないことに備えるコストと、実際に起きたときに失うものの大きさを比べれば、答えは自然に決まってきます。備えにかけるコストを渋ることは、起きてから何倍もの代償を払うことにつながりやすいものです。
今日からできる次の一手
今日からできる次の一手を、一つだけお伝えします。今の夜間シフトの職員数と、応援職員が実際に駆けつけるまでにかかる時間を、紙に書き出してみてください。それだけで、今のBCPが夜間の場面を想定できているかどうかが、かなりはっきり見えてきます。
自治体によって、運営指導で確認される書類の様式や、夜間体制について求められる記録の細かさが異なることがあります。この「自治体ごとに違う」という点自体、見落とされがちなところです。当事務所では、ご依頼をお受けした際に所轄の自治体へ直接確認を取り、その運用に合わせて計画を整えます。「所轄に聞いてください」で終わらせることはしません。
当事務所では、BCP策定支援を含む障害福祉サービスのご相談を無料相談で承っています。指定申請だけのスポット依頼も可能です。広島・山口を拠点に、オンライン顧問で全国のグループホーム・就労継続支援B型事業者に対応しています。夜間の体制に不安がある方は、まず今の計画を見せてください。BCP策定支援の内容と料金は障害福祉サービスの価格表で確認いただけます。ひな形のBCPがなぜ動かないのかについては、こちらの記事「そのBCP、運営指導で通りますか」でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
※本記事の内容は2026年8月時点の一般的な知見に基づくものです。制度の詳細や自治体ごとの運用については、改定や解釈の違いにより変わる可能性があります。詳細は所轄自治体にご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。
