感染症BCP(業務継続計画)の作り方|看護師・保健師の視点で何が変わるか

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。今回は「感染症BCP(業務継続計画)」を、ひな形どおりに作って終わりにするのではなく、実際に手を動かして作り込むと何が変わるのか、という話をします。

目次

感染症BCP(業務継続計画)、ひな形はここまでしか埋まらない

就労継続支援B型やグループホームでBCPを作るとき、多くの事業所はまず厚生労働省が公開しているひな形をダウンロードします。感染症の章を開き、消毒液の在庫数と職員の検温ルールを書き込み、平時の備蓄リストを埋めて、「感染症BCP、完成」としてファイルに綴じる。ここまでは、どの事業所もだいたい同じ手順を踏みます。

問題は、そのBCPを実際に開いて読んだときに、「職員の半分が感染症で出勤できなくなったら、誰が、どの利用者の、どの支援を、どの順番で続けるのか」という問いに、具体的に答えられているかどうかです。ひな形は、備蓄や消毒の手順までは書けますが、この「人が足りなくなったときに、何を優先し、何を止めるか」という核心の部分は、事業所ごとの利用者の状態や建物の構造によって変わるため、外から持ってきたひな形では埋まりません。

就労継続支援B型・グループホームで、感染症BCPが必要になるのは誰か

これは、就労継続支援B型・グループホームを運営していて、感染症BCPをすでに一度は作った、あるいはこれから作ろうとしている事業所向けの話です。ひな形は埋めた、担当者も決めた、でも「これで本当に動くのか」と聞かれると自信を持って答えられない――そういう管理者の方に向けて書いています。

障害福祉サービスの事業所には、感染症と非常災害の両方について業務継続計画を策定し、研修・訓練を通じて実効性を持たせることが求められています。策定しているかどうかだけでなく、内容が実際の場面で機能するかどうかが、運営指導で見られるポイントになります(このBCP策定の要件・減算の考え方については、当事務所が2026年7月に厚生労働省の一次資料で確認済みです。詳細は関連記事「BCP未策定減算」をご覧ください)。

感染症BCPに本当に書くべき3つのこと

感染症のBCPで本来書くべきことは、大きく分けて次の3つです。

まず、平時にやっておくことです。ゾーニングの考え方、備蓄品の管理、職員の健康管理の体制を、実際に運用できる形で書きます。次に、発生時の初動です。誰が最初に何をするか、どの順番で誰に連絡するか、情報をどう共有するかを決めておきます。そして最後が、人員が欠けたときの業務の優先順位です。

このうち、ひな形が最も弱いのは3番目です。人員が半分になったとき、どの支援を優先し、どの支援を一時的に縮小するかは、その事業所の利用者の状態、日々の支援の内容、建物の構造によって変わります。ここを埋めないまま「BCP完成」としてしまうと、実際に人が足りなくなった場面では機能しません。

看護師・保健師の視点が入ると、感染症BCPの中身はどう変わるか

当事務所には、看護師(実務歴30年)と保健師(公衆衛生学を専門とする)が在籍しており、感染症BCPの作成では、この体制の視点を交えています。看護師の視点からは、実際に現場で職員が体調を崩したとき、どの支援業務なら経験の浅い職員に引き継げるか、逆にどの支援業務は代われる人が限られるかが見えてきます。保健師の視点からは、施設内でどう感染を広げないか、ゾーニングや職員・利用者の動線をどう設計するかという、公衆衛生の理屈が入ります。

私自身も救急救命士・准看護師として、人が倒れる現場に立ち会ってきました。BCPの文章の上では「緊急時対応」の一行で済まされがちな場面が、実際の現場ではどれだけ人手を奪うかを知っています。だからこそ、感染症BCPの「人員が欠けたときの優先順位」の章は、机上の作文にせず、現場で本当に動く形で具体的に書く必要があると考えています。

消防査察30年の目で見る、感染症BCPと避難計画の重なり

消防の予防査察を約30年、5,000件担当してきた経験も、ここで生きます。避難確保計画・消防計画とBCPは、それぞれ別の書類として作られがちですが、実際には「人が足りないときに何を優先して動くか」という同じ問いに答える書類です。書類ごとに書いてあることが食い違っていないか、審査する側の目で確認できることも、この事務所の強みだと考えています。

感染症BCPが動かないと、事業はどう損をするか

感染症BCPが「作っただけ」で止まっていると、何が起きるでしょうか。まず、運営指導で「策定はしているが、実効性が確認できない」という指摘を受けるリスクがあります。BCPは作成しているだけでなく、研修・訓練を通じて実際に機能することが求められているため、中身が伴わないBCPは、記録として残っていても、実効性を問われれば説明に窮することになります。

もう一つは、実際に感染症が発生したときの損失です。職員の半分が出勤できない状態が数日続いたとき、優先順位があらかじめ決まっていなければ、その場その場で管理者が一つひとつ判断することになります。判断に時間がかかれば、その分だけ支援の質が落ち、結果として利用者にしわ寄せが行きます。優先順位をあらかじめ決めておくことは、いざというときに事業を止めないための備えそのものです。

自治体によって確認される中身は変わる

BCPの様式や、運営指導で確認される具体的な項目は、自治体によって細かく扱いが異なります。全国どこでも通じる原則は「感染症と非常災害の両方について、実効性のある計画を持つこと」ですが、その計画に何をどこまで書き込むべきか、研修・訓練の記録をどの形式で残すべきかは、自治体ごとの運用に差があります。ネットで見つけた他県向けの解説をそのまま自分の事業所に当てはめると、思わぬところでつまずくことがあります。

当事務所では、ご依頼をお受けした際に所轄の行政機関へ直接確認を取り、その自治体の運用に合わせてBCPを整えています。「所轄に聞いてください」で終わらせず、確認そのものを当事務所が引き取ります。

今日からできること

今日からできることは、今お手元にあるBCPを開いて、「人員が半分になったら、何を止めて、何を続けるか」という一文が、具体的に書かれているかを確認することです。書かれていなければ、それが次に埋めるべき空欄です。

当事務所では、障害福祉サービス(就労継続支援B型・グループホーム)のBCP作成を、看護師・保健師の視点も交えてお手伝いしています。ひな形はあるが中身に自信が持てない、という状態からのご相談も承っています。すでにひな形BCPをお持ちの方は、関連記事「ひな形を埋めただけのBCPが、なぜ動かないのか」も参考にしてください。

BCP作成だけのスポット依頼、指定申請から継続する顧問契約のどちらにも対応しており、広島・山口を拠点にオンラインで全国対応しています。費用の目安は障害福祉サービスの価格表でご確認いただけます。まずは無料相談で、今のBCPを一度見せてください。


※ 本記事は2026年8月時点の一般的な内容です。BCPで確認される具体的な記載事項や運営指導での運用は、事業の種別や所轄自治体によって異なる場合があります。個別の状況については、当事務所の無料相談でご確認ください。

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