
指定申請、自分でできるか|B型・GH開設で行政書士に頼む基準

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。
「指定申請、自分たちで出せますよね」。就労継続支援B型やグループホーム(共同生活援助)の開設を考えている事業者様から、よくいただく言葉です。実際、法律上、事業者様ご自身が自分の指定申請書類を作成することに問題はありません。行政書士でなければ出せない、というものではないのです。
問題は「できるかどうか」ではなく、「やる価値があるかどうか」です。今日は、指定申請を自分でやるか、行政書士に依頼するかを判断するときに見るべき3つの軸を、消防の書類審査を約30年見てきた立場からお話しします。
これは誰の話か
対象になるのは、これから就労継続支援B型やグループホームの指定を取ろうとしている法人・個人事業主の方です。すでに開設支援の会社やフランチャイズ本部がついている場合は事情が少し違います。その場合の書類の役割分担は、別の記事「障害福祉の指定申請・変更届は誰が作る?行政書士との役割分担」で扱っていますので、そちらをご覧ください。今日お話しするのは、そうした外部の手を借りず、法人だけで指定申請を進めようとしている方に向けたものです。
指定申請で、実際に何が求められるか
指定申請では、法人の登記事項証明書、運営規程、重要事項説明書、平面図、人員配置の体制、収支予算書など、性質の異なる複数の書類を、内容を矛盾なく揃えて同時に提出する必要があります。どれか1つの書類だけを丁寧に作ればよいわけではありません。平面図に描いた居室の面積と運営規程に書いた定員、人員体制の計画と収支予算に計上した人件費が、すべて整合していなければならないのです。
書式そのものは、自治体が公開している手引きに沿えば作成できます。難しいのは書式を埋めることではなく、複数の書類の整合性を保ちながら、自治体ごとに異なる運用に合わせるところにあります。
行政の側の視点 ― 審査で見られているもの
書類を審査する側の一般的な視点をお伝えします。指定申請に限らず、行政に提出する複数の書類がセットになった申請では、審査担当者は必ず書類同士の突き合わせを行います。ある書類の数字が、別の書類の記載と食い違っていないか。ここが、複数書類を初めて同時に作るときに、いちばんズレが生まれやすいところです。
ズレが見つかれば補正の指示が入ります。1回の補正で済めば軽い話ですが、修正した箇所が別の書類との整合性を新たに崩し、また補正、ということも起こり得ます。この往復が起きるたびに、指定を受けられる日は後ろに延びていきます。書類の分量が多い手続きほど、この構造は強く働きます。
典型的なズレ方には、いくつかのパターンがあります。定員を運営規程で決めた後、平面図の居室の面積要件を後追いで確認し、実は足りていなかったと分かるケース。人員配置の計画を先に組み、収支予算をその後で作ったところ、人件費と収入のバランスが崩れているケース。いずれも、それぞれの書類だけを見れば正しく書けているのに、書類同士を突き合わせると初めて矛盾が見えてくる、という共通点があります。だからこそ、審査する側は必ず突き合わせを行うのです。
自分でやる場合に、最低限押さえておきたいこと
自分で進める選択そのものは、決して間違いではありません。実際、法人内に手続きに慣れた職員がいる場合や、時間に余裕を持って開設を計画できている場合は、自分で進めても十分に成立します。自分で進める場合は、次の2点だけは意識しておいてください。
一つは、書類を1本ずつ順番に仕上げるのではなく、全体を一度に俯瞰する時間を作ることです。平面図・運営規程・人員配置・収支予算は、それぞれ別の書類として作りますが、内容としては一つの事業計画の別の側面にすぎません。ばらばらに作ってから最後に合わせようとすると、ズレに気づいたときには手戻りが大きくなります。
もう一つは、自治体の窓口に、早い段階で一度は相談の機会を持つことです。提出直前にまとめて確認してもらおうとすると、その場で複数の指摘が重なり、修正の負担が一度に集中します。早い段階で方向性だけでも確認しておけば、大きな手戻りは避けられます。
事業の損得への翻訳 ― 自分でやることの本当のコスト
ここが今日いちばんお伝えしたいところです。指定申請を自分でやるかどうかは、次の3つの軸で判断してください。
1つ目、時間の軸です。指定申請の準備には、書類そのものを書く時間より、自治体窓口とのやり取りや補正への対応に時間がかかることが多いものです。この期間は、多くの場合、物件の賃料や人件費が発生しながら、事業収益はまだゼロという期間と重なります。往復が増えるほど、この収益ゼロの期間が延びます。
2つ目、やり直しの軸です。補正のたびに確認事項が積み上がり、担当者との調整も増えます。最初の提出で整合性の取れた書類を出せるかどうかで、往復の回数そのものが変わってきます。
3つ目、機会費用の軸です。書類作成に充てる時間は、本来、職員の採用、物件の引き渡し準備、利用を予定している方々への説明といった、開設後の運営に直結する準備に使える時間でもあります。書類に時間を取られている間、こうした立ち上がりの準備がその分だけ後回しになります。
自分でやること自体が悪いわけではありません。ただ、「書類作成に費やす時間」と「その時間を他の準備に使えたときの価値」を比べると、後者のほうが大きくなる事業者様が少なくない、というのが実務上の感覚です。この比較を一度してみることを、まずお勧めします。
自治体差という、もう一つの見えにくいコスト
指定申請は法律上、全国共通の制度ですが、様式・添付書類・事前協議の要否は自治体ごとに幅があります。インターネットで見つけた他の自治体の情報をもとに準備を進め、実際に窓口へ持ち込んだら様式が違っていて差し戻された、ということは起こり得ます。自分で調べて進める場合、「自治体ごとに扱いが違うこと自体」に気づくのが、実は最も難しいところです。
当事務所では、ご依頼をお受けした際に所轄の窓口へ松永が直接確認を取り、その自治体の運用に合わせて書類を整えます。「所轄に確認してください」とお返しして終わらせるのではなく、確認そのものを引き取るのが当事務所のやり方です。
今日できる、次の一手
まずは、ご自身が予定している指定申請に必要な書類の一覧を、自治体の手引きから洗い出してみてください。そのうえで、「この書類同士の整合性を、自分たちだけで最後まで取り切れるか」を、正直に見積もってみることをお勧めします。ここで難しいと感じた時点が、ご相談いただくタイミングです。
無料相談について
当事務所では、就労継続支援B型・グループホームの指定申請について、無料相談を承っています。指定申請だけのスポットのご依頼も、開業から運営までを見据えた顧問契約も、どちらにも対応しています。詳しいサービス内容は「障害福祉サービス」のページでご確認いただけます。広島・山口を拠点に、オンラインで全国対応しています。「自分でやるか、頼むか」で迷っている段階でも、遠慮なくお声がけください。
※本記事は2026年8月時点の一般的な考え方をまとめたものです。指定申請の様式・添付書類・運用は自治体により異なります。詳細は所轄自治体または当事務所へご確認ください。
