就労継続支援B型のお金の流れ|給付費と工賃「2つの財布」の違い

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。

就労継続支援B型を運営していると、お金は大きく2つの流れで入ってきます。行政から入る「給付費」と、生産活動(作業や商品販売)で稼ぐ「売上」です。この2つは、性格がまったく違うお金です。ところが、これを”同じ一つの財布”で考えてしまうと、「工賃がどうしても上がらない」「処遇改善加算の実績報告で何を書けばいいか分からない」といった詰まりが、必ずどこかで起きます。今日は、就労継続支援B型のお金の流れを、「2つの財布」に分けて整理します。

目次

お金は「2つの財布」に分かれている

まず、この一枚の絵を頭に入れてください。B型事業所のお金は、次の2つに分かれています。

  • 財布A:給付費(公費) → 使い道は事業所の運営費・職員の給与
  • 財布B:生産活動収益(売上) → 使い道は利用者の工賃

この2つは、行き先が決まっています。財布Aのお金を、財布Bの工賃に回すことはできません。 ここが、B型のお金を理解するうえで、いちばん大事な一点です。理由は次の章で説明します。

財布A:給付費(公費)は、どう決まって、どこへ行くのか

給付費は、公費——つまり税金と保険料が原資です。一般的な自立支援給付では、国が2分の1、都道府県が4分の1、市町村が4分の1を負担する仕組みになっています(負担区分の一般的な建付けです。B型の利用者負担は、多くの場合ゼロです)。

流れは、こうです。事業所が毎月のサービス提供実績を国保連(国民健康保険団体連合会)に請求し、国保連が審査したうえで、給付費を事業所に支払います。金額の決まり方は、おおまかに次の式です。

基本報酬 = サービス費の区分 × 単位数 × 単価 + 各種加算

ポイントは、この金額は国保連の側で確定するということです。事業所は「いくらもらえるか」を自分で計算して決めるのではなく、基準にそって請求し、審査を通ったものが支払われる。そして受け取った給付費は、事業所の運営費と、職員の給与に充てます。後で出てくる処遇改善加算も、この財布Aに含まれます(=職員の賃金改善のためのお金です)。

なお、B型の基本報酬は、近年の報酬改定で平均工賃月額に応じて区分が変わる仕組み(平均工賃評価型)などが用いられています。つまり、利用者の工賃を上げる努力が、事業所が受け取る報酬にも跳ね返る設計になっている、ということです(区分の要件は報酬改定で変わるため、その年度の内容を確認する必要があります)。

財布B:工賃は「売上」からしか払えない

もう一方の財布Bは、生産活動——受注作業や商品販売で稼いだ売上です。ここから材料費などの必要経費を引いた残りが「生産活動収益」で、これが利用者へ支払う工賃の原資になります。

ここで、言葉を一つ整理します。B型の利用者と事業所の間には、雇用契約がありません。 だから、支払うのは「賃金」ではなく「工賃」です(雇用契約があるのはA型の方で、そちらは「賃金」です)。

そして、これが先ほどの最重要ポイントにつながります。工賃は、財布B(生産活動収益)からしか払えません。 財布Aの給付費は、法令上、運営費・人件費に充てるお金であって、これを利用者の工賃に流用することはできない建付けになっています。

だから、「工賃を上げたい」と思ったら、答えは一つしかありません。売上を増やすか、単価を上げるか。 給付費が増えても、それは工賃の原資にはならないのです。ここを取り違えて、「加算が取れたから工賃も上げよう」と考えると、財布の建付けから外れてしまいます。工賃向上は、あくまで財布B側(営業・受注・単価)の経営課題です。

処遇改善加算の「実績報告」は、もらう額を計算する書類ではない

ここまで分かると、多くの事業者がつまずく処遇改善加算の実績報告が、すっきり理解できます。

まず、処遇改善加算は財布Aのお金で、職員の賃金改善に使うことが前提の加算です。2024年度(令和6年度)の報酬改定で、それまで複数に分かれていた加算が「福祉・介護職員等処遇改善加算」として一本化されました(制度は改定で変わるため、最新の内容は所轄・厚生労働省でご確認ください)。

この加算は、1年サイクルで動きます。

  1. 年度の初め:計画書 — 「今年、職員の賃金をこう改善します」という計画書を、指定権者(都道府県・市町村)へ提出する
  2. 毎月:入金 — 報酬に上乗せされて、加算が毎月入ってくる(給付費と一緒。実際の入金は概ね2か月後)
  3. 年度末:実績報告 — 「受け取った加算を、実際にこれだけ賃金改善に使いました」と証明する
  4. 精算 — 使った額が受け取った加算額に届かなければ、不足分を返還する。足りていれば完了

ここで大事なのは、実績報告書(別紙様式)は「報酬をいくらもらうか」を計算する書類ではないということです。もらう額は、財布Aの「区分×単位×単価+加算」で、すでに国保連の側で確定しています。実績報告は、そのの話——受け取った加算を、ちゃんと職員の賃金改善に使ったかを報告し、精算する書類なのです。

いちばん痛いのは「使い切れずに返還」――行政の側が見るところ

実績報告でこわいのは、受け取った加算額に対して、賃金改善の実額が届かず、返還を求められることです。加算は「もらって終わり」ではなく、「使い道を後で証明する」お金だからです。

私は消防で約30年、書類を審査する側にいました。福祉の運営指導そのものを行った立場ではありませんが、「審査する側が書類の何を見るか」という点では、共通する原則があります。それは、「やったか」ではなく「記録で示せるか」です。実際に賃金を改善していても、その根拠(賃金台帳、就業規則や給与規程の改定、支給の実績)が記録で結びつかなければ、「示せない」ものとして扱われかねません。日ごろの記録が、そのまま事業を守る証拠になる——ここは、BCPでも運営指導でも、まったく同じ構図です。(中身の伴わない書類が通用しない点は、ひな形BCPが運営指導で通らない理由でも書いています。)

「2つの財布」で見ると、経営の打ち手が分かれる

最後に、この整理が実務でどう効くかをまとめます。

  • 「職員の給与・処遇を良くしたい」 → 財布A。処遇改善加算を取りこぼさず算定し、計画どおり賃金改善に充て、記録で示す。これが打ち手です。
  • 「利用者の工賃を上げたい」 → 財布B。売上・単価・受注を伸ばす。給付費をいくら増やしても、ここは動きません。

この2つを混同したまま「なんとなくお金が回らない」と悩んでいる事業所は、少なくありません。まず財布を分けて見る。 それだけで、次に打つべき手がはっきりします。

お金の流れの整理、一緒にやります

「加算を取りこぼしていないか」「実績報告で返還にならないか」「工賃をどう上げればいいか」——お金の流れが整理できていないと、この3つはいつまでも不安のままです。

当事務所では、お手元の請求内容・加算の算定状況・実績報告の下書きを見せていただき、財布Aと財布Bに分けて、どこに打ち手があるかを一緒に整理します。 無料相談を承っていますので、まずは今の状況を見せてください。

  • 就労継続支援B型・グループホームの指定・運営・加算のご相談はこちら
  • 実績報告の確認だけのスポットご相談も、日ごろから備える継続顧問も、どちらも承っています
  • 広島・岩国を拠点に、オンライン顧問で全国対応しています

お金の流れは、2つの財布に分けて見れば、決して難しくありません。その整理を、一緒に進めましょう。

※本記事は一般的な情報提供です。給付費の負担区分・報酬区分・処遇改善加算の要件・実績報告の様式は、年度の報酬改定や自治体により異なります。また、税務・労務の個別具体的な判断は、税理士・社会保険労務士など各専門家の領域です。個別の対応は所轄・各専門家への確認のうえ進めます。

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