
障害福祉のBCPはAIで作れるか|査察30年の経験と融合して動く計画に

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。
「業務継続計画(BCP)は作った。でも、いざというとき本当に動くのか、正直自信がない」——就労継続支援B型やグループホーム(共同生活援助)を運営する方から、この段階のお困りごとに、いちばんよく行き当たります。今日は、そのBCPや避難計画を、AIと、私の消防査察30年の経験を”融合”させて、その施設だけの「動く計画」にしていく話をします。結論から言えば、AIだけでも、経験だけでも足りません。混ざったときに、はじめて使える計画になります。
そのBCP、運営指導で見られるのは「あるか」だけではありません
まず、誰の話かをはっきりさせます。これは、BCPをひな形で埋めて一度は仕上げたが、実際に動く気がしない事業所と、これから作るが何から手を付けていいか分からない事業所、その両方の話です。
障害福祉サービスでは、業務継続計画(BCP)の策定と、それにもとづく研修・訓練が求められています。ここで見落とされがちなのが、運営指導で見られるのは「計画書があるか」だけではないという点です。策定の有無に加えて、研修や訓練を実際に行った記録まで確認されます。さらに自治体によっては、計画の中身——「その体制で、実際に動けるのか」——に踏み込んで質問されることもあります。少なくとも、分厚いだけで実態の伴わない計画は、記録と現場が食い違ったところから見抜かれやすい——これは、長く書類を審査する側にいた人間としての実感です。この構図は、ひな形BCPが運営指導で通らない理由でも書いたとおりです。
AIが得意なこと、AIにできないこと
では、AIはどこまで使えるのか。正直に申し上げると、AIが得意な作業は、防災計画づくりの中にたくさんあります。
- 膨大な基準・ガイドラインを突き合わせる
- 抜けを洗い出す(想定していない事態、決めていない役割、書いていない手順)
- 書式に落とす(BCP、避難計画、訓練の計画書、報告書)
- 場合分けを網羅する(昼間と夜間、平日と休日、職員が多いときと少ないとき)
このあたりは、人間より速く、抜けも少ない。BCPづくりが進まない最大の理由は「面倒で時間がかかるから」ですから、そこが軽くなる意味は大きい。私自身、経営大学院(MBA)でAIも学びながら、実務で使ってきました。使わない手はない、というのが率直なところです。
ただし、AIには決定的に持っていないものがあります。「その施設で、実際に何が起きるか」という想定です。
足りないのは「現場で何が起きるか」――ここに30年の経験を載せる
AIに「グループホームのBCPを作って」と頼むと、それらしいものが出てきます。避難経路があり、連絡体制があり、役割分担の表もある。読むと、もっともらしい。
けれども、現場を見てきた側からすると、「この計画は、その夜に動かない」と分かってしまうことがあります。理由は単純で、その施設に固有の事情が入っていないからです。
- 夜勤は職員が一人、という時間帯に、地震が起きたら誰がどう動くのか
- 利用者の特性がそれぞれ違う――自力で階段を降りられる人と、そうでない人が混在している
- 避難動線のすぐ脇に、いつも物が置かれているという日々の運用
- 停電すると、その建物のどこがどう不便になるのか
これらは、図面にも書式にも載っていません。現場を歩いて、初めて分かることです。そしてAIは、現場を歩けません。
私は消防行政に約30年おり、立入検査で現場を見て、「事故はどこで、どう起きるか」を確かめ続けてきました。査察のとき、私たちが何を見て、どこを疑い、何を突くのか。その着眼点こそが、AIに渡すべき”入力”です。AIが作った計画が動かないのは、AIが劣っているからではなく、渡す入力が足りないからなのです。裏を返せば、30年分の「どこを見るか」を指示として載せれば、AIは相当に良い仕事をします。
感染症BCPは、看護師・保健師の視点で人員の優先順位まで
福祉のBCPが難しいのは、自然災害や火災だけでなく、感染症まで一体で想定しなければならないからです。ここは、経験と現場の目が、もう一段効いてきます。
感染症でこわいのは、建物ではなく人員が欠けることです。職員が同時に何人か倒れたとき、限られた人手で、どの支援を先に回し、何を止めるのか。その優先順位を、平時のうちに決めておけるかどうか。当事務所には看護師・保健師が在籍しており、感染症のBCPは、この医療・公衆衛生の視点を入れて組み立てます。 ひな形の空欄を埋めるだけでは、この「人員が欠けたときの順番」までは書けません。
AIは、こうした条件を整理し、場合分けを網羅するのは得意です。そこに「実際に人が動けるか」という現場の判断を載せる。この組み合わせが効きます。
経験×AIの融合で、その施設だけの避難訓練・PDCAが回り出す
具体的な進め方は、こうです。
- その事業所の条件を、AIに先に細かく聞き出させる(建物、階数、時間帯別の職員数、利用者の特性、避難動線、設備の癖)
- 聞き出した条件から、起こりうる事態を先に想定させる(計画を書かせる前に、ここをやらせるのが肝心です)
- 想定ごとに、誰が・何分以内に・何をするかまで決めさせる
- そこに、査察で突かれやすい点を私の経験から点検として足す
- その計画で訓練し、記録し、また直す――PDCAを回す
ゼロから白紙で作るのと、たたき台が目の前にあるのとでは、進み方がまったく違います。「何か月も止まっている」状態からは、確実に抜け出せます。 そしてAIは使うほど学習するので、回すほどにその施設へ合っていく。最後の詰め――現場を見ないと決められない部分――は人がやりますが、そこに至るまでの距離が、まるで変わります。BCPを何から始めるかの順番は、障害福祉のBCP作成、何から始めるべきかにまとめています。
動くBCPは、減算対策ではなく事業と利用者を守る備え
ここで、損得の話に翻訳しておきます。BCPを「運営指導で減算されないための、面倒な提出物」と捉えると、どうしても後回しになります。そうではなく、動くBCPは、いざというときに利用者の命と、事業そのものを守る備えです。
災害や感染症で支援が止まれば、失うのは報酬だけではありません。利用者やご家族からの信頼、職員の安全、そして事業の継続そのものが、同時に危うくなります。逆に、本当に動く計画と訓練があれば、その場面で事業所は持ちこたえられる。同じ手間をかけるなら、”提出のための計画”ではなく、”本当に動く計画”に変えたほうがいい。 AIは、その手間を軽くする道具であり、経験は、それを動くものにする中身です。
まずは今のBCPを見せてください
「作ったBCPが動く気がしない」「これから作るが、何から手を付けていいか分からない」——その段階でのご相談を歓迎します。
当事務所では、お手元のBCPや避難計画を見せていただき、査察30年の視点と、看護師・保健師の視点で、「その施設で本当に動くか」を一緒に点検します。 そのうえで、AIも使いながら、動く計画と訓練の形に整えていきます。無料相談を承っていますので、まずは今の状況を見せてください。
- 就労継続支援B型・グループホームのBCP・防災・指定運営のご相談はこちら
- BCPの点検だけのスポットご相談も、日ごろから備える継続顧問も、どちらも承っています
- 広島・岩国を拠点に、オンライン顧問で全国対応しています
AIは、防災を止めている「面倒くささ」を取り除いてくれます。取り除いたあとに残る、現場の判断のところ。そこを、30年の経験で一緒に埋めるのが、私たちの仕事です。
※本記事は一般的な情報提供です。BCPの策定・研修・訓練に関する具体的な要件・様式・確認の重点は、年度の報酬改定や自治体により異なります。個別の対応は所轄への確認のうえ進めます。
