障害福祉のBCP作成、何から始めるべきか|正しい順番

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。

障害福祉の業務継続計画(BCP)は、「作らなければならない」という部分は知っていても、実際に真っ白なひな形を前にすると、何から手を付ければよいのかで止まってしまいます。今日は、ひな形を埋める前に決めておくべき「順番」の話をします。

目次

業務継続計画(BCP)作成でつまずくのは、どの事業者か

就労継続支援B型やグループホーム(共同生活援助)を運営する事業者様が対象です。減算の仕組みそのものは別記事で詳しくお伝えしていますので、ここでは簡単におさらいするに留めます。令和6年4月から、障害福祉サービス事業者にはBCPの策定が義務づけられ、未策定のままだと基本報酬が減算されます(詳しくは「BCP未策定減算は遡って適用されます」をご覧ください)。

今日お話ししたいのは、減算を止めるための「作り方」ではなく、実際に動くBCPにたどり着くための「順番」です。順番を間違えると、様式は埋まっても、計画は現場で動きません。

BCP策定で求められていること(おさらい)

障害福祉サービス事業者に求められているのは、感染症と非常災害、両方についての業務継続計画です。片方だけでは未策定と判断され、減算の対象になります。当初あった経過措置は令和7年3月31日で終わっており、すでに1年以上が経過しています。

ここまではご存じの事業者様も多いはずです。問題は、この先の「何から手を付けるか」です。

BCP作成の正しい順番 ― ひな形を埋める前にやること

厚生労働省はBCPのひな形や様式集、研修動画を公開しています。ただし、ひな形はあくまで「型」であって、それをそのまま上から埋めていく作業から始めると、たいてい途中で行き詰まります。お勧めしているのは、次の順番です。

①まず、自分の事業所の「弱いところ」を洗い出す

いきなり様式に向かわず、最初は紙とペンで構いません。夜勤は何人体制か、職員は片道どれくらいの距離に住んでいるか、協力医療機関との連絡手段はあるか、停電したら何が止まるか。ここを飛ばして様式を埋めると、後から「この計画、うちの実態と違う」ということに気づき、結局作り直しになります。

②「何を、誰が、どこまで守るか」を決める

災害や感染症が起きたとき、事業所の全機能を止めずに動かすのは非現実的です。優先して継続する業務(利用者の安全確保、必須の支援)と、一時的に縮小・停止してよい業務を、先に仕分けます。ここは管理者だけで決めず、サービス管理責任者や現場の職員の声も入れておくと、後の周知がしやすくなります。

③骨組みができてから、様式に落とし込む

①と②がまとまって初めて、様式の空欄を埋める作業に意味が出ます。この順番を逆にすると、様式の見た目は整っていても、中身が「その場しのぎ」になりがちです。

④管理者の承認を取り、職員に周知する

作って終わりではありません。運営規程や重要事項説明書との整合も確認したうえで、管理者の承認を得て、職員全員に周知する工程が要ります。

⑤研修・訓練を実施し、記録を残す

BCPは、研修と訓練までがセットです。計画書があるだけで、研修記録も訓練記録も無ければ、運営指導では「策定はしているが、実効性が確認できない」という指摘に繋がりかねません。

⑥定期的に見直す

職員の異動、物件の変更、協力医療機関の変更などがあれば、その都度見直します。年1回など、見直しのタイミングをあらかじめ決めておくと、放置されにくくなります。

グループホーム(共同生活援助)と就労継続支援B型とでは、①の洗い出しで重心を置くべき点が変わります。グループホームは利用者が生活している場所なので、夜間・深夜の体制が最優先になります。一方、就労継続支援B型は日中サービスですから、夜間よりも、通所できなくなった利用者の安否確認や、送迎が止まった場合の代替手段が優先度の中心になります。同じ様式を使っていても、①で何を重く見るかは、事業の性質によって変わるということです。

順番を間違えると、何が起きるか

私は消防の予防課で約30年、5,000件を超える立入検査に携わってきました。書類を審査する側にいた経験から申し上げると、様式を先に埋めてしまった計画書ほど、後になって直しにくいものです。

様式には決まった項目があります。緊急連絡先、参集基準、代替職員の確保方法。これらを、実態を洗い出す前に「とりあえず埋めて」しまうと、その後、実態と様式の間にズレが生じたときに、様式全体を作り直す羽目になります。順番を守って、実態から積み上げていれば、様式は後からいくらでも整えられます。逆はできません。

順番を守ると、何が変わるか

先に骨組みを作ってから様式に落とす場合と、様式を先に埋めてしまう場合とで、かかる手間は大きく変わります。

様式を先に埋めてしまうと、実態とのズレに気づき、様式を作り直し、周知や研修もやり直す、という手戻りが発生します。この手戻りにかかる時間と、外部に依頼した場合の追加費用は、最初から順番を守っていれば生じなかったものです。

一方で、順番を守って作った計画は、運営指導でも「その場しのぎ」には見えません。指摘を受けて慌てて直すのではなく、日頃の記録の延長として説明できる状態になります。書式が整っているかどうかではなく、その事業所のものになっているかどうかを見られる、ということを踏まえれば、この差は小さくありません。

自治体によって、見られ方が変わることがある

BCPの様式そのものは全国共通のひな形が公開されていますが、運営指導の場でどこまで細かく確認されるか、追加でどのような資料を求められるかは、自治体によって差があります。ネット上で見つけた「他県ではこの内容で通った」という情報をそのまま当てはめると、思わぬところで指摘を受けることがあります。

当事務所は広島・山口を拠点にオンラインで全国対応していますが、ご依頼をお受けした際には、所轄の窓口に松永が直接確認を取り、その自治体の運用に合わせて計画を整えます。「所轄に確認してください」で終わらせず、確認そのものを引き取るのが、私たちのやり方です。

今日からできる最初の一歩

様式のダウンロードは、いったん後回しにしてください。今日できるのは、①の「弱いところの洗い出し」です。夜勤の体制、職員の通勤距離、協力医療機関との連絡手段。この3つを紙に書き出すところから始めてください。ここができていれば、様式を埋める作業は驚くほど早く進みます。

BCP作成のご相談を承っています

BCPは、期限までに形にすることと、実際に動くものにすることを、両方やらなければならない書類です。順番を間違えると、その両方が遠のきます。

当事務所では、無料相談を承っています。弱いところの洗い出しの段階からご一緒することも、様式に落とし込む段階だけのご依頼も可能です。行政の側で計画書を見てきた目と、看護師・保健師が在籍する体制の両方で、実際に動くBCPになっているかをお伝えします。

顧問契約のほか、BCP策定のスポットでのご依頼も承っています。障害福祉サービスの支援内容はこちら(障害福祉サービスのご案内)をご覧ください。BCP未策定減算の詳しい仕組みについては、BCP未策定減算は遡って適用されますで解説しています。広島・山口を拠点に、オンラインで全国対応しています。


※本記事は2026年7月時点の情報にもとづいています。BCPの様式や運用の細部は、所轄自治体や事業所の状況によって異なる場合があります。個別の判断については、所轄自治体または当事務所へご確認ください。

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