
運営指導で最初に開かれる書類|行政の側にいた行政書士が見る点

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。
運営指導(実地指導)の当日、指導に来た担当者が最初に手を伸ばすのは、どの書類だと思われますか。
きれいにファイリングされた運営規程でしょうか。それとも、分厚い重要事項説明書でしょうか。
どちらでもありません。最初に開かれるのは、日々の記録です。
私は消防の予防課で約30年、立入検査を通じて「書類を審査する側」に立ってきました。分野は違っても、行政が書類を見るときの目のつけどころは驚くほど共通しています。今日は、就労継続支援B型・グループホームの運営指導で、行政の側が記録のどこを見ているのかをお話しします。
これは、どなたの話か
この記事は、次のような立場の方に向けて書いています。
- 就労継続支援B型・グループホーム(共同生活援助)の管理者
- サービス管理責任者(サビ管)として記録の管理を任されている方
- 運営指導の通知はまだ来ていないが、「うちは大丈夫だろうか」と気になっている方
通知が来てから慌てる方は、とても多いです。ただ、運営指導で問われるのは「通知が来てから何をしたか」ではなく、「通知が来る前の日々に何をしていたか」です。だからこそ、今この記事を読んでいる時点で手を打てることがあります。
なぜ規程ではなく、記録から見るのか
理由は単純です。規程は「そうすると決めた」ことしか示さないのに対し、記録は「実際にそうした」ことを示すからです。
運営基準が求めているのは、体制が整っていることです。しかし、体制が本当に機能していたかどうかは、その場では見えません。見えるのは記録だけ。だから行政は記録を通して体制を確認します。
これは消防の査察でもまったく同じでした。消防計画という立派な書類があっても、訓練の記録が無ければ、その計画は「紙の上にしか存在しない」と判断されます。書類の厚さと、体制の実態は比例しません。
行政の側が、記録の何を見ているのか
具体的に、どこを見るのか。私の経験から、4つに整理してお伝えします。
1. 日付の連続性
まず、日付が飛んでいないかを見ます。毎月あるはずの記録が、ある月だけ無い。ある時期から急に記載が薄くなっている。こうした「途切れ」は、体制が回っていない時期があったことを示す痕跡として扱われます。
2. 署名・確認の主体
誰が書き、誰が確認したのか。 記録に求められるのは、書かれている内容だけではありません。それを誰が担ったのかが分かることが、体制の証明になります。作成者と確認者が全期間まったく同一で、しかもその方が不在だった時期にも同じ署名が並んでいれば、当然そこを尋ねられます。
3. 書類どうしの整合
ここが、最も突かれやすいところです。行政は1つの書類だけを見て判断しません。複数の書類を並べて、話が合うかどうかを見ます。
- 勤務実績の記録と、支援の記録に登場する職員が一致しているか
- 個別支援計画に書かれた支援内容が、日々の支援記録に現れているか
- 会議録に出席したことになっている人が、その日の勤務記録上も出勤しているか
1枚ずつは完璧なのに、並べると合わない。 これは実際によく起きます。書類ごとに担当者が分かれていて、互いを突き合わせる機会が無いまま提出されるからです。
4. 例外が起きた日の処理
普段どおりの日の記録は、正直なところ、あまり長く見られません。行政が知りたいのは、普段と違うことが起きた日に、どう動いたかです。
利用者の体調が急に変わった日。職員が急に足りなくなった日。ヒヤリとした出来事があった日。そうした日の記録が「特記事項なし」で埋まっていると、記録そのものの信頼性が下がります。逆に、うまくいかなかったことが正直に書かれ、その後の対応まで残っている記録は、高く評価されます。
後から揃えた記録は、なぜ分かるのか
これはお伝えしておくべきだと思います。通知が来てから慌てて作った記録は、見る側には分かります。
言い回しが全期間で均質すぎる。筆記具や筆跡が揃いすぎている。日々の揺らぎが無い。実際に日々書かれた記録には、忙しい日の乱れや、書き手による癖の違いが必ず残ります。それが無い記録は、かえって不自然に見えます。
ですから、私は「直前に作り込む」ことをお勧めしません。間に合わせようとすることが、かえって心証を悪くするからです。無いものは無いと認めたうえで、いつから、どう立て直したのかを示すほうが、結果的に良い方向に進みます。
記録の不備は、経営の数字に返ってくる
記録の不備は、単なる書類仕事の問題では終わりません。
体制が確認できないと判断されれば、加算の要件を満たしていないとみなされることがあります。加算は毎月の収入そのものですから、さかのぼって精算を求められれば、事業計画は一気に狂います。
しかもこれは、支援の質が低かったから起きるとは限りません。実際にはきちんと支援していたのに、それを示す記録が残っていなかったというだけで、同じ結果になり得ます。だからこそ、記録は「面倒な事務作業」ではなく、事業を守る資産として扱っていただきたいのです。
なお、運営指導の通知が届いてからの具体的な進め方は「運営指導の通知が来たら|就労継続支援B型・グループホームの準備の進め方」にまとめています。あわせてご覧ください。
今日できる、小さな一歩
大がかりな点検は要りません。まず、直近1か月ぶんの記録を3種類、机の上に並べてみてください。
- 勤務実績(誰がいつ働いたか)
- 支援記録(その日、誰に何をしたか)
- 個別支援計画(何をすると決めたか)
この3つを突き合わせて、話が合うかどうかを見る。それだけで、運営指導で問われる論点の多くが先に見つかります。合わないところが出てきたら、それは失敗ではなく、指導の前に見つかった幸運です。
当事務所が、この分野をお引き受けする理由
私は消防の予防課で約30年、5,000件を超える立入検査に携わってきました。行政の側で、書類を突き合わせて確認する仕事を長く続けてきたということです。分野は違っても、記録から体制を読み取るという作業の構造は変わりません。その目で、指導が来る前に点検します。
もう一点、当事務所には看護師と保健師が在籍しています。利用者の急変や感染症の場面で「その記録で、実際に動けるのか」を、医療の実務を知る目で確認できる体制があります。書類として整っていることと、現場で動けることは別物です。当事務所は、その両方を見ます。
まずは、無料相談へ
運営指導は、通知が来てから準備を始めると、どうしても間に合わない記録が出てきます。まだ通知が来ていない今が、いちばん打ち手のある時期です。
当事務所では無料相談を承っています。お手元の記録をそのままお持ちください。「これで足りるのか」「どこから直せばよいか」を、行政の側の目でお伝えします。整っていない状態のままで、まったく構いません。整っていないところを見つけるのが、この相談の目的です。
顧問契約による継続的なサポートのほか、運営指導の事前対策だけのスポット依頼も承っています。サービスの詳細は障害福祉サービス支援のページをご覧ください。広島・山口を拠点に、オンライン顧問で全国対応しています。
なお、運営指導で求められる書類の様式や重点項目は、自治体によって扱いが分かれます。「所轄に確認してください」で終わらせるつもりはありません。ご依頼をお受けした際は、当事務所から所轄へ直接確認を取り、その自治体の運用に合わせて整えます。
