入居者の症状、誰に相談する?|夜間・休日も繋がる相談ルートの作り方【急変対応③】

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。

シリーズ第3回のテーマは、「症状を、誰に相談するか」です。入居者の様子がいつもと違う。でも、「119番するほどだろうか」「でも放っておいていいのか」——この“迷い”の時間を、夜勤の職員一人に抱えさせていないでしょうか。第1回では急変時の初動、第2回ではDNARを扱いました。今回は、その手前にある「迷ったときに、誰へ繋ぐか」という相談ルートを、平時に用意しておく話です。

目次

「誰に相談するか」を、状況別に決めておく

急変とまでは言えないが心配、という場面は日常的にあります。ここで大事なのは、相談先を”状況別”に、あらかじめ決めておくことです。おおまかに、次の5つを整理しておきます。

  1. かかりつけ医:日中の、その利用者の主治医。持病や薬を分かっている一次相談先。
  2. 訪問看護:連携している訪問看護があれば、医療的な観察・判断の相談ができる。
  3. 協力医療機関:急変時の相談・診療・入院を受けてくれる、あらかじめ決めた医療機関。
  4. ♯7119(救急安心センター):救急車を呼ぶべきか迷ったとき、電話で看護師等に相談できる公的窓口(次の章で詳しく)。
  5. 施設の看護職員:看護職員がいる時間帯なら、まずここへ。

この5つの「どの状況で、誰に、どうやって連絡するか」を、連絡先とあわせて一枚にしておく。これだけで、夜勤の職員は「自分で抱え込む」から「決められた相手に繋ぐ」へ変われます。

♯7119という、公的な”相談窓口”を知っておく

意外と知られていないのが、♯7119(救急安心センター事業)です。これは総務省消防庁の事業で、急な病気やけがで「救急車を呼んだ方がいいか、今すぐ病院に行った方がいいか」判断に迷うとき、電話で看護師等からアドバイスを受けられる窓口です。

施設にとって、これは心強い一手になります。「119番するほどか分からない」というまさにその迷いに、専門職が電話で応えてくれるからです。ただし、注意点が一つ。♯7119は全国展開の途中で、地域によって実施の有無や対応時間(24時間か、夜間・休日のみか)が異なります。 ですから、「自分の施設のある地域で、♯7119が使えるか」を平時に確認し、使えるなら連絡網に加えておくことが大切です。使えない地域では、その分、かかりつけ医・訪問看護・協力医療機関のルートを厚くしておきます。

国の制度も「相談・受診ルートの確保」を求めている

「相談先を決めておく」は、単なる心がけではありません。制度そのものが、この方向へ動いています。

まず介護の世界では、2024年度の介護報酬改定で、介護保険施設に対し、入所者の急変時などの①相談対応②診療③入院を担う「協力医療機関」を定めることが義務づけられました(3年間の経過措置があり、2027年には全施設で必要になります)。つまり国は、「急変時に相談・受診できる医療機関を、平時に確保しておきなさい」と、はっきり求めているのです。

障害福祉でも、同じ方向の後押しがあります。グループホームには医療連携体制加算があり、令和6年度の報酬改定でも見直されました。看護職員による訪問看護や医療的ケアの体制を整えると評価される(加算が算定できる)仕組みで、区分によって単位数に幅があります。相談・医療連携の体制を整えることが、そのまま収益にもつながる——これは、体制整備にお金をかける十分な理由になります(加算の算定可否は要件があり、要確認です)。

夜間・休日こそ、ルートが要る

相談ルートが本当に問われるのは、職員が手薄な夜間・休日です。日中で看護職員もいる時間帯なら、まだ判断できる。けれど、夜勤が一人の時間に「様子がおかしい」となったとき、繋ぐ先がなければ、その職員は孤立します。

だからこそ、連絡網には「昼はここ、夜・休日はここ」と、時間帯別の相談先を明記しておく。かかりつけ医が夜間対応でないなら、♯7119や協力医療機関、救急へのルートを用意しておく。この「手薄な時間帯の相談ルート」こそ、第1回でお伝えした急変時の初動と、地続きの備えです(入居者の急変、救急車を呼ぶ前に)。

相談を早くする「情報の一枚」

相談ルートを決めたら、もう一つ。相談を早く・正確にするための情報を、入居者ごとにまとめておきましょう。持病、常用薬(お薬手帳の写し)、かかりつけ医、アレルギー、そして本人・家族の意思。これが手元にあると、電話一本の相談でも、相手に的確に伝わり、判断が早くなります。急変のとき、この一枚があるかないかで、動き出しの速さが変わります。

「迷ったら相談していい」を、施設の約束にする

相談ルートを作っても、職員が「こんなことで連絡したら迷惑では」「大げさだと思われないか」と遠慮すれば、使われません。急変対応でいちばん怖いのは、この“遠慮による様子見”です。

だから、施設として「迷ったら相談していい。結果的に何でもなくても、誰も責めない」を、はっきり約束しておく。これは第1回でお伝えした「判断を個人に背負わせない」と、同じ考え方です。相談のハードルを下げておくことが、いざというときの一分一秒を守ります。

あわせて、相談するときに伝えることも、簡単に決めておくと迷いません。「いつから・どんな様子か」「体温・脈・呼吸などの見た目の変化」「持病と飲んでいる薬」——この順で伝えれば、電話の相手にも早く正確に伝わります。

業際の一線と、当事務所の役割

念のため、はっきりさせておきます。症状から「これは何の病気か」「どう処置するか」を判断するのは、医師・医療職の領域です。施設や行政書士が、個別の医療判断をすることはできません。私たちの役割は、その医療に正しく・早く繋ぐための”仕組み”(相談ルート・連絡網・情報の様式・記録)を整えることです。

当事務所には、保健師・看護師・救急救命士の有資格者が在籍しています。医療・救急の現実を踏まえて、「どの症状で、誰に、どう繋ぐか」の相談ルートを、行政書士として運営体制・書面に落とし込めます。医療連携加算の体制づくりや、協力医療機関との連携の整理も、そこに含めてご一緒できます。

次の一歩

まず、自施設の連絡網に、時間帯別の医療相談先(かかりつけ医・訪問看護・協力医療機関・♯7119)が入っているかを確認してください。そして、♯7119が自分の地域で使えるかを調べておく。抜けがあれば、そこが整備の出発点です。相談ルートづくりや医療連携体制のご相談は、グループホーム・福祉施設の運営のご相談から、今の状況を一言添えてご連絡ください。

次回(第4回)は、感染症を取り上げます。施設内で広げないための備えと、発生してしまったときの動き方です。

出典・参考(2026年9月時点)

制度・対応は地域・年度により異なります。最新は各機関でご確認ください。

– 総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)」|https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate008.html

– 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(医療連携体制加算 等)|https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37772.html

– 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」(協力医療機関との連携体制)|https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html

※本記事は一般的な情報提供です。♯7119の実施状況・対応時間、協力医療機関・医療連携体制加算の要件は、地域・年度・自治体により異なります。症状や処置に関する医療判断は医師・医療機関の領域です。個別の対応は、主治医・所轄・各専門家への確認のうえ進めてください。

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