福祉のBCPは”得”で考える|減算回避・WAM低利融資・感染症対策

皆さん、こんにちは。行政書士くまのみ法務事務所の松永浩行です。

就労継続支援B型やグループホームで、BCP(業務継続計画)を「義務だから、仕方なく」作っていませんか。今日お伝えしたいのは、福祉のBCPは”損を避け、得を取る”経営の話だ、ということです。減算という”損”を避けるだけでなく、低利融資や税制という”得”まで取りにいける。順番に、具体的な数字で整理します。

目次

まず”損を避ける”――BCP未策定減算(最大3%・遡って適用)

2024年度(令和6年度)から、障害福祉サービスではBCPの策定が完全義務化され、未策定には業務継続計画未策定減算が科されます。減算率は、施設系・居住系(グループホーム等)で3%、訪問系・通所系(就労継続支援B型等)で1%

しかも重いのは、基準を満たさない状態が判明すると、その時点まで遡って減算される点です。数か月分をさかのぼれば、金額は決して小さくありません。まず、これが”避けるべき損”です。BCPを作る一次的な動機は、正直ここにあります。

福祉のBCPは「自然災害」と「感染症」の両方が要る

ここで見落とされがちなのが、福祉のBCPは自然災害と感染症の”両方”が求められる、という点です(2024年度から、両方が義務)。

とくに感染症BCPは、建物ではなく「人が欠けること」への備えです。職員が同時に何人も感染して出勤できなくなったとき、限られた人手で、どの利用者の、どの支援を優先するのか。この人員の優先順位を平時に決めておけるかどうかが核心で、ひな形の空欄を埋めるだけでは、ここは書けません。当事務所では、在籍する看護師・保健師の視点を入れて、この感染症で人が欠ける場面まで想定して組み立てます。中身の伴わない計画が通用しない理由は、ひな形BCPが運営指導で通らない理由にまとめています。

“得を取る”①――WAM(福祉医療機構)の長期・固定・低利融資

BCPを本気で作ると、次に「非常用電源や耐震、スプリンクラー等の設備を、どう資金手当てするか」という現実にぶつかります。ここで使えるのが、福祉医療機構(WAM)の福祉貸付です。

社会福祉施設の整備資金を、長期・固定・低利(償還期間はかなりの長期)で借りられる公的融資で、耐震・防災のための設備整備にも充てられます。金利は時期によって変わりますが(ある時点では年0.8〜1.9%程度)、民間より有利な水準で、物価高騰への対応など優遇メニューが用意されることもあります(最新の金利・条件はWAMでの確認が必要です)。「BCPで洗い出した”やるべき設備投資”を、有利な資金で実行する」——ここまで来て、BCPは初めて絵に描いた餅でなくなります。

“得を取る”②――事業継続力強化計画で税制・補助金の加点

さらに、BCPを土台にして、国の「事業継続力強化計画」の認定を取れば、福祉事業者でも、防災・減災設備の税制優遇(特別償却)や、日本政策金融公庫の低利融資、各種補助金の加点といった支援につながります(対象・率・期限は制度改定で変わるため、要確認)。「どうせBCPを作るなら、認定まで通して”得”も取りにいく」——この発想があるかどうかで、同じ手間の価値がまったく変わります。

“損”は、いくらになるのか(ざっくり試算)

減算の重さを、イメージでつかんでおきます(あくまで目安です)。たとえば、ある月の給付費が300万円の通所系事業所(減算1%)なら、1か月あたり約3万円。グループホーム等の居住系(3%)で月300万円なら、月約9万円。しかも未策定は遡って適用されるため、判明するまでの数か月分がまとめて効いてきます。

「たかが1〜3%」ではありません。“作っていないだけで、毎月、しかも遡って引かれ続ける”——これが減算の怖さです(実額はサービス種別・規模・自治体の運用で変わります)。

BCPは「作って終わり」ではない――研修・訓練の記録まで

“損を避ける”うえで、もう一点大事なことがあります。BCPは策定して終わりではないという点です。運営指導では、計画書の有無だけでなく、それにもとづく研修・訓練を実際に行った記録まで見られます。感染症BCPなら「発生時の役割分担を職員に周知し、訓練したか」、自然災害BCPなら「避難の訓練をしたか」。ここまでそろって、はじめて減算を確実に避けられます。作っただけで安心せず、年間の予定に研修・訓練を組み込んでおきましょう。ここは、感染症で人員が欠ける場面を想定するほど、実効性の差が出ます。

補助金も、地域によっては使える

設備投資の資金では、WAM融資のほかに、自治体の補助金が使えることがあります。非常用自家発電、スプリンクラー等の消防用設備、感染症対策の資機材などに対し、年度ごとに補助メニューが用意される場合があります。ただし、内容・募集時期・対象は自治体と年度で大きく変わるため、「今、自分の地域に何があるか」を確認するのが先決です。当事務所では、ご依頼をお受けした際に、所轄・自治体の最新のメニューを確認して整理します(「所轄に聞いてください」で終わらせません)。

何から手をつけるか――順番を間違えない

進め方の順番も大事です。おすすめは、①今あるBCPが「自然災害+感染症」の両方を満たしているか点検する → ②足りない部分(とくに感染症時の人員の優先順位、研修・訓練の記録)を埋める → ③そのうえで、必要な設備投資をWAM融資や補助金・税制と結びつける、の3段階です。

いきなり融資や補助金から入ると、”中身のないBCP”に設備だけが乗る形になりがちです。まず動くBCP、次に資金。 この順番が、結局いちばん損をしません。

だから「義務」ではなく「投資」

ここまでを、経営の損得で締めます。BCPを”提出のための義務”と捉えると、最低限で終わり、減算を避けるだけの守りで終わります。けれど”投資”と捉えれば——減算という損を避けつつ、低利融資や税制で得を取り、いざというとき利用者と事業を守れる。 同じ労力なら、後者に振り向けたほうがいい。体制づくりや防災は、お金をかけてでもやる価値がある。 福祉の経営でも、ここは変わりません。

次の一歩

まず、自施設のBCPが「自然災害+感染症の両方」を満たし、研修・訓練の記録まで残っているかを点検してください。そのうえで、使える融資・税制・補助金を棚卸しする。ここまで一度整理すると、”損を避ける”から”得を取る”へ、視点が切り替わります。

出典・参考(2026年9月時点)

減算率・要件・金利・税制は改定で変わります。最新は各機関でご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供です。減算率・要件、融資の金利・条件、税制の率・期限は、年度の報酬改定・制度改定・自治体により異なります。税務や個別の資金計画は税理士等の専門家に、最新内容は所轄・各機関(WAM・中小企業庁等)にご確認ください。

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